
対象年を指定しても、AIの回答に公式FAQと違う条件が入りました。振込手数料の質問を実際に2回送り、原文を添えた後の変化と、残った確認不足を照合します。
「事前に合意していれば、振込手数料を代金から引いてもよい?」。この問いをAIに投げると、禁止の方向で答えながら、確認事項には「自由な意思による合意か」を挙げました。結論だけ読めば気づきにくい食い違いです。
公正取引委員会の取適法FAQ Q99は、対象取引で銀行振込手数料を受注側に負担させ、代金から差し引く扱いについて、合意の有無にかかわらず問題になると説明しています。今回の回答を採用する前に止めるべき箇所は、「合意の自由さによって控除の扱いが変わる」と読める条件付けでした。
AI実用ラボでは、2026年11月1日に同じモデルへ2つの質問を実際に送り、返答を保存しました。ここでは、どの文を公式資料と照合し、質問へ何を足し、返ってきた回答のどこまでを使えると判断したかを示します。個別取引の違反認定をAIへ任せる手順ではありません。
1.まず質問を「対象取引の銀行振込手数料」に絞る
最初に送った質問の全文です。
ポイントは、発注時期、取適法の対象取引であること、銀行振込手数料、事前合意という4条件を先に指定したことです。税金、端数処理、電子記録債権の手数料などを一度に混ぜず、公正取引委員会のFAQ Q99と照合できる問いにしました。
これは公式FAQの条件を使う一般的な質問です。実在する取引先の契約や、実際の控除・入金をAIに見せたものではありません。自分の取引で使う場合は、対象であることを質問に書くだけで済ませず、委託内容と両社の資本金・従業員基準を取適法の概要で確認します。改正規定は2026年1月1日以降の発注に適用されます。発注時期は施行時の留意事項でも確かめてください。
2.「原則禁止」の後に付いた条件を読み落とさない
返答の結論は次のとおりでした。引用部分は保存した出力のままです。
事前合意があったとしても、受注側の同意が「自由意思に基づくもの」と認められない場合、不当な経済上の利益の提供要請(買手側の優越的地位の濫用や下請法違反)に該当する可能性があります。
さらに「個別の取引で別途確認する情報」の先頭には、こうありました。
ここで確認を「双方が納得していたか」へ進めると、今回の問いに対して遠回りになります。FAQ Q99が示すのは、対象取引における銀行振込手数料の代金からの控除は、合意がある場合も問題になるという扱いです。合意の有無や自由さを、この控除を認める条件として採用できません。
返答冒頭の禁止らしい言葉だけで丸を付けず、理由と確認事項にも、原文にない条件が入り込んでいないかを読みます。今回止めたのは、この部分です。回答のすべてが同じ理由で誤りだという評価ではありません。
3.公式FAQで、結論を分ける語を見つける
FAQを開き、ページ内検索で「Q99」または「振込手数料」を探します。質問にある銀行振込と代金からの差し引きが、自分の確認したい扱いと一致しているかを先に見てください。答えで確認したい短い語句は、次の部分です。
この語句と、AIが挙げた「自由な意思により合意されたものであるか」を並べると、どの条件が増えてしまったかが分かります。AIに「もう一度よく考えて」とだけ頼む前に、参照したい原文を人が確定する作業が必要でした。
資料の見出しやURLだけでは、回答がその本文に基づくか分かりません。Q99の質問と答えを開き、対象を限定する言葉まで確認します。振込明細の差額を見ただけで、その全額を銀行振込手数料だと決めないことも大切です。控除の名目や請求額との関係は、別途書類で調べます。

4.同じ質問へ原文を添えて、返答を照合し直す
2回目は、1節の質問をそのまま使い、続けて「公正取引委員会の取適法FAQ Q99」とURL、Q99の回答原文を貼り付けました。その後に加えた指示は、次のとおりです。
返ってきた結論は、次の文になりました。
「個別の取引で別途確認する情報」は、次の2点でした。
* 本件の受注側が「中小受託事業者」に該当するか
今回の出力では、結論がFAQ Q99の合意に関する条件にそろいました。一方、この確認事項だけで個別取引の対象判定が終わるわけではありません。発注側の規模と委託内容も概要ページで照合する必要があります。結論が直った後も、必要な確認がすべて列挙されたかは別に点検します。

5.変わったことと、まだ任せられないこと
今回の差を、次に行う作業と結び付けるとこうなります。
| 見た箇所 | 最初の回答 | 原文を添えた後 | 人が確認すること |
|---|---|---|---|
| 合意の扱い | 自由意思による合意かを条件として挙げた | 事前合意があっても控除できないと返した | Q99の対象と条件に一致するか |
| 対象判定の確認事項 | 合意や取引上の力関係などを挙げた | 発注日と受注側の該当性を挙げた | 発注側の規模・委託内容も含め、概要と照合する |
| 実際の取引事実 | 契約・明細を提示していない | 契約・明細を提示していない | 控除名目、金額、発注日、契約資料を自分で確認する |
実行したのはGoogleのGemini APIで、指定したモデル名は `gemini-flash-lite-latest` です。Geminiの一般向けチャット画面、他のモデル、検索機能付きの回答をまとめて評価した結果ではありません。Googleのモデル名の説明では、latestは更新に伴い参照先が切り替わる別名とされています。同じ名前でも将来の返答まで同じとは限りません。
各質問は1回ずつです。2回目には原文だけでなく追加指示も入れているため、どの変更がどれだけ効いたかを切り分けた実験ではありません。再現率やモデル全体の優劣も分かりません。確認できたのは、この2回の返答で変わった文と、その文が原文に合うかどうかです。
6.自分の回答を採用する前の確認手順
同様の回答を仕事で使うときは、次の順で見直してください。
- 問いの範囲を固定する。 対象年、対象取引かどうか、銀行振込手数料なのかを分ける。未確認の条件を、確認済みとして質問に書かない。
- 原文と回答の条件語を比べる。 「合意があれば」「原則」「ただし」などを見つけ、公式の該当箇所が本当にその条件を示すか確かめる。
- 食い違った文を指定して聞き直す。 該当する原文を添え、契約事実や金額を補わずに回答を整理させる。URLを付けただけで本文を読んだと扱わない。
- 直った結論と残る確認事項を別に点検する。 今回なら、Q99との一致に加え、発注側・受注側の規模と委託内容、発注日、明細の控除名目を確認する。
完了の目安は、採用する各説明について「対応する公式箇所」と「未確認の取引条件」を自分で示せることです。公式資料と回答が食い違う文は使わず、対象範囲を確定できない場合は、資料と書類をそろえて公正取引委員会の相談案内へ進みます。
契約書や明細をAIへ入力する前に、社内規程と利用サービスのデータ取扱条件を確認してください。氏名、取引先名、口座情報など、照合に不要な情報は入力しません。今回の一般的な質問を、そのまま実際の取引の適法性の判定へ置き換えないでください。
参考資料

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公開日:2026年11月1日/運営:AI実用ラボ
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