従業員から介護の相談を受けたら:会社の初動と支援ツールの使い分け

従業員から介護の相談を受けたら:会社の初動と支援ツールの使い分け

介護の相談を受けたとき、制度案内と意向確認をどう分ける?厚労省の様式を選び、次の担当へ渡すメモを整理します。

従業員から「家族の介護が始まりそうで、仕事を続けられるか心配です」と相談されたら、まず本人が希望する連絡方法と、仕事について相談したいことを確認してください。介護の詳しい事情を聞き込む必要はありません。

会社の対応は、①相談を受ける、②制度を案内して利用意向を個別に確認する、③必要な担当者へ引き継ぐ、のように整理できます。法定の周知・意向確認と、社内の相談記録や引継ぎは別の作業です。厚生労働省の様式は選ぶ助けになりますが、自社の制度や申出先と一致するか確認してから使います。

相談の第一声で確認する範囲

最初の会話では、本人の希望を聞き、次の対応を決めるために必要な範囲にとどめます。

  • 仕事について、何を相談したいか
  • 連絡は面談、書面、メールなど、どの方法を希望するか
  • いつ、誰から連絡するとよいか
  • 相談を引き継ぐ社内窓口が決まっているか

たとえば、本人が「親の通院に付き添うことが増えそうです」と話した場合、「介護の状況を詳しく教えてください」と聞き始めるのではなく、「仕事について、どのようなことを相談したいですか」「連絡はどの方法がよいですか」と確認します。相談者が話した内容を超えて、家族の病名や生活状況などを尋ねる必要があるかは、目的を確かめてから判断してください。

人事や経営者が、医療上の判断や介護サービスの選定を代わりに行う必要はありません。制度の内容や社内の申出先が分からないときは、その場で推測せず、担当窓口へ確認してから本人に返します。本人の希望が確認できない項目は「未確認」として扱います。

会社に必要な対応を3つに分ける

介護に関する改正事項は2025年4月1日から施行されています。相談を受けたときの個別対応だけでなく、職場環境の整備と、介護に直面する前の情報提供も分けて確認してください。厚生労働省「法改正のポイント」

対応対象・タイミング確認すること
雇用環境の整備介護休業や両立支援制度等の申出が円滑に行われるための職場づくり研修、相談窓口、自社の利用事例の提供、利用促進方針の周知のうち、少なくともいずれかの措置を講じているか
申出後の個別周知・意向確認介護に直面した旨を申し出た労働者制度の内容、申出先、介護休業給付金に関する事項を周知し、制度利用の意向を個別に確認したか
早い段階での情報提供介護に直面する前の早い段階(40歳等)制度の内容、申出先、介護休業給付金に関する情報を提供したか

雇用環境整備は、示された4つの措置のうちいずれかが必要で、複数の措置を講じることが望ましいとされています。相談窓口を置いただけで、申出後の個別周知・意向確認まで完了したことにはなりません。

申出後の周知・意向確認は個別に行います。方法は面談、書面交付、FAX、電子メール等から選べますが、FAXと電子メール等は労働者が希望した場合に限られます。取得や利用をためらわせるような説明・確認は認められません。

早期の情報提供期間は、労働者が40歳に達する日の属する年度(1年間)または、40歳に達する日の翌日から1年間です。社内の対象者や実施時期を決める際は、誕生日だけで判断せず、厚生労働省の説明に照らして確認してください。

支援ツールから使う様式を選ぶ

厚生労働省の支援ツール掲載ページには、企業の役割や対応事項、実施ポイント、利用できる様式・資料があります。相談を受けた直後に使うもの、法定の周知に使うもの、40歳等への情報提供に使うものは、それぞれ別の資料です。厚生労働省「実務的な支援ツール」

目的掲載資料の例使う前に確認すること
相談を受ける・対話を進める「介護に関する相談を受けた場合 ~会社の対応ポイント編~」「相談時の対話例編」相談者の希望を聞く場面や、社内での対応に合うか
申出後の個別周知・意向確認「介護休業及び介護両立支援制度等個別周知・意向確認書記載例」自社の制度、申出先、給付金に関する案内と一致するか
面談や社内の支援体制を整理する「仕事と介護の両立支援 面談シート 兼 両立支援体制計画」面談内容と社内の担当・支援体制をどう記録するか
40歳等へ早期の情報提供をする「40歳情報提供記載例」対象者と提供時期、自社の制度・申出先に合うか

ページを開いたら、用途に合う資料名を選んでください。掲載ページでは資料の形式や記載例の有無も確認できます。様式をそのまま配布する前に、自社の制度、申出先、担当窓口、問い合わせ先が現状と一致しているかを確認します。違いが見つかった場合は、社内の制度を確認できる担当者へ戻し、内容を合わせてから使ってください。

図にすると、資料選びは次のように整理できます。

相談を受ける → 制度・申出先を案内する → 意向を個別に確認する → 必要な担当へ引き継ぐ

相談対応の資料は会話の参考、個別周知書は法定事項の周知・意向確認、面談シートは面談や社内体制の整理に使います。この流れは資料の用途を示すもので、法律が定める期限や一律の実施順序を表すものではありません。

相談後の案内から個別周知・意向確認、社内面談、引継ぎへ進む例と、個別周知書・面談シートの用途の違いを示します。法定の順序を示す図ではありません。
相談後の案内から個別周知・意向確認、社内面談、引継ぎへ進む例と、個別周知書・面談シートの用途の違いを示します。法定の順序を示す図ではありません。

相談後の引継ぎメモを作る

引継ぎメモには、担当者が次の対応に必要な情報だけを記録します。下の様式は、空欄を埋めて使うためのテンプレートです。実際の相談内容や実施結果がない項目は、推測して記入せず「未確認」としてください。

項目記録する内容
相談日実際に相談を受けた日
本人が希望する連絡方法面談、書面、メールなど。未確認なら「未確認」
仕事について相談したいこと本人が話した範囲を簡潔に記録
案内した資料・制度実際に案内した資料名。まだなら「未案内」
次の担当社内で確認できた担当者または窓口
次に確認すること制度、申出先、給付金の案内など、未確認の事項
次の連絡時期本人と合意した時期。決まっていなければ「未定」

相談直後の記入例

第1節の「親の通院に付き添うことが増えそう」という発言だけを受け取った段階の記入例です。日付や本人の希望、社内の担当窓口はこの発言から分からないため、補わずに残します。

項目記入例
相談日未確認
仕事について相談したいこと親の通院に付き添うことが増えそう(本人の発言)
本人が希望する連絡方法・時期未確認
案内した資料・制度未案内
次の担当・社内窓口未確認
次に確認すること本人に仕事上の相談内容と連絡方法を確認する。社内の相談窓口と制度の担当を管理者へ照会する。
次の連絡時期未定

この段階で引継ぎを進める担当は、相談を受けた人です。まず本人に希望する連絡方法と仕事上の相談内容を尋ね、社内の窓口・制度担当が分からなければ管理者へ確認します。確認できた窓口へ制度情報を照会し、回答を得てから本人に案内します。回答や担当がまだ決まっていない間は「未確認」のままにし、引継ぎや本人への案内が完了したとは記録しません。

記録を共有するときは、誰が何を確認するために必要な情報かを先に考えてください。相談内容を必要以上に詳しく書いたり、本人の希望を確認せずに広く共有したりしないようにします。

完了確認と避けたい対応

対応後は、次の項目を分けて確認します。

  • 法定の周知・意向確認:制度の内容、申出先、介護休業給付金について本人に案内したか。制度を利用する意向を個別に確認したか。
  • 早期の情報提供:40歳等の対象者と提供期間を確認し、制度の内容、申出先、給付金に関する情報を提供したか。
  • 社内の引継ぎ:次の担当が決まり、未確認事項、確認先、本人への戻し方が分かるか。
  • 本人との連絡:希望する連絡方法や次の連絡時期が確認できているか。未定なら、未定と分かる状態にしているか。

本人が制度利用を希望しない場合でも、取得や利用を控えさせる言い方で意向を変えようとしてはいけません。介護の詳細を人事が判断しようとする、個別周知を相談記録で代用する、社内様式の内容を確認せず法定情報として渡す、といった対応も避けてください。

制度や申出先が分からない、様式と社内運用が合わない、次の担当が決まらない場合は、そこで完了扱いにせず、社内の制度を確認できる担当者または相談窓口へ戻します。育児・介護休業法について問い合わせるときは、厚生労働省が案内する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へ相談してください。(介護休業制度特設サイト)

この記事の対象は、従業員から家族介護について初めて相談を受けた小規模事業者の経営者・人事労務担当者です。介護保険サービスの選定、個別の法的判断、助成金申請の詳細は扱っていません。

関連記事

参考資料

公開日:2026年11月6日/運営:AI実用ラボ

コメント