
農水省の苦情例をGeminiへ2通りの指示で入力。元の文章にない「補償」が要望へ加わった結果と、事実・未確認・提案を分けた後も人が補う項目を実出力で確認します。
「誠意を見せろ」という発言を、AIが「対応・補償など」の要求としてまとめました。しかし、元の公表例には、補償を求めたという記載はありません。文章が読みやすくなっても、顧客が求めたことまで増やしてしまうと、引き継ぐ責任者に違う情報が伝わります。
農林水産省の飲食店向け資料にある一つの例を使い、申し送りの頼み方を変えて実際に確かめました。「事実・未確認・提案」の三つに分けると具体的な要求の推測は避けられましたが、日時や担当者など、人が確認して補う項目は残りました。 飲食店の店長やホール担当者が、AIの要約をそのまま渡す前に確かめる点を紹介します。
1. 公表例をそのまま要約してもらう
入力に使ったのは、農林水産省のガイドラインの紙面17–18頁「初期対応のトーク例」にある一文です。実店舗の顧客記録は入力していません。自店で試すときは、先に氏名・連絡先・注文番号などを取り除き、利用するAIへ渡してよい情報か自店のルールも確認してください。
2026年11月1日、Gemini API(`gemini-flash-lite-latest`)へ、以下の二つの指示を各1回入力しました。 以下の出力は全文です。二つの指示は別々に送っており、2回目に1回目の出力は渡していません。
1回目に送った指示と事例
次の飲食店の対応例を、責任者への申し送り用に短く整理してください。
メニューの写真と違うというお客様に理由を説明したが、「納得できない、誠意を見せろ」と繰り返し言われた。実際に返った全文
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【申し送り事項】メニュー写真との差異に関するクレーム
* 状況:
* お客様より「メニューの写真と違う」とご指摘を受けた。
* 理由を説明したがご納得いただけず、「納得できない」「誠意を見せろ」と繰り返し主張されている。
* お客様の要望:
* 説明への納得、および「誠意(対応・補償など)」の提示。
* 現状:
* 現場での対応が平行線となっているため、責任者による引き継ぎ・対応が必要。
2. 「補償」は元の事例に書かれていない
元の一文で分かるのは、写真と違うという申出があり、店側が理由を説明した後も、顧客が納得できず誠意を求める発言を繰り返したことです。AIの出力と照合すると、次の違いがありました。
| 照合する箇所 | 元の一文と比べてどうか | 申し送りでの扱い |
|---|---|---|
| 写真と違うという指摘、説明後も発言を反復 | 元の一文にある経過です | 発言と対応の経過として残せます |
| 「説明への納得」 | 元の発言は「納得できない」です。何をすれば納得できるか、説明の追加を求めているのかまでは分かりません | 不満の表明と具体的な要求を分け、どの点の説明・対応を希望しているか確認してください |
| 「誠意(対応・補償など)」 | 補償は元の一文にありません | 顧客が補償を求めた事実として記録せず、何を希望しているか確認してください |
| 「責任者による引き継ぎ・対応が必要」 | 実施済みの引継ぎや店内の切替基準は元の一文にありません | 現状の事実とは分け、店の体制に照らす対応案として扱ってください |
「補償など」はAIが考えた候補かもしれません。それでも「お客様の要望」の欄に置かれると、読み手が実際の要求だと受け取るおそれがあります。顧客の発言と、AIが補った解釈を同じ欄で確定させないことが、今回の確認点です。
写真と料理の具体的な違いも、この一文では不明です。注文どおりの料理が届いたか、表示や盛付けに問題があったかも、実物・注文票・メニューを確かめる必要があります。「説明しても納得しなかった」だけで、不備がなかったことまで確定させないでください。
また、この発言だけで法的なカスハラの認定はできません。苦情対応と従業員を守る対応は、具体的な言動・状況と自店の方針に沿って検討してください。危険がある場合は、要約や記録の作成を待たず、安全確保と責任者への連絡を優先してください。厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」
3. 三つに分けて頼み直した結果と、残った不足
2回目は、同じ一文に対し、事実・未確認・確認の提案を分けるよう指定しました。日時や顧客の要求を推測しない条件も加えています。
2回目に送った指示と事例
次の公表例だけを根拠に、責任者への申し送りを作ってください。「資料に書かれた事実」「未確認の事項」「次に確認することの提案」の3区分に分けてください。提案は実施済みの対応と混ぜないでください。日時・回数・料理の状態・顧客の具体的な要求・従業員の状態を推測で補わないでください。
メニューの写真と違うというお客様に理由を説明したが、「納得できない、誠意を見せろ」と繰り返し言われた。実際に返った全文
### 資料に書かれた事実
* メニューの写真と違うというお客様に理由を説明した。
* お客様から「納得できない」「誠意を見せろ」と繰り返し言われた。
### 未確認の事項
* お客様の具体的な要求内容(どのような対応を求めているか)
* 注文された料理の種類およびメニュー写真と実際の商品との具体的な相違点
* お客様に説明した「理由」の内容
* 対応を行った日時、対応の回数、従業員の状態
### 次に確認することの提案
* お客様が求める「誠意」の具体的内容を確認すること。
* 写真との相違点としてお客様が指摘された箇所の詳細を確認すること。
この出力では、「補償」は要望の事実として書かれず、「誠意」の具体的内容を確かめる提案になりました。料理の相違点や説明した理由も、確認が必要な項目として分けられています。
ただし、これだけで引継ぎ記録の完成とはいえません。未確認欄には日時がありますが、場所・対応者は列挙されておらず、誰が確認していつ返答するかも決まっていません。 厚労省のマニュアル紙面32頁は、引継ぎで共有する例として日時・場所・対応従業員・要望・指示・結果を挙げています。AIが出した項目だけで済ませず、実際の担当者に確認して補ってください。
渡す前に、次の順で整えてください。
- 要望欄を元の発言と照合する。 今回なら「補償」を顧客の要求として足さず、「どのような対応を希望しているかは未確認」と残してください。
- 担当者へ不足を確認する。 いつ・どこで・誰が対応したか、何を説明し相手がどう反応したかを、実際の経過に沿って追記してください。分からない内容を推測で埋めないでください。
- 未確認の仕事を引き渡す。 注文票と提供品・表示の照合、顧客の具体的な希望の確認について、責任者と確認担当者・返答予定を決めて記録してください。確認や対応が終わったら、その結果を追記してください。
元の発言にない要求が確定事項として入っておらず、確認済みの経過と未確認の事項を区別でき、次に誰が何を確認し、誰がいつ返答する予定かを責任者と共有できた段階で、申し送りとして渡せます。安全確保が先に必要な場面は、この作業の完了を待たないでください。
今回確かめたのは、一つの事例に対する各1回の結果です。指示には区分以外の条件も加えているため、区分だけの効果や一般的な精度を示す結果ではありません。同じ指示でも出力は変わります。実際に使うときも、元の記録との照合を残してください。
参考資料
- 農林水産省「カスタマーハラスメント対策ガイドライン ~飲食店のための~」:紙面17–18頁、公表例の出典。
- 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」:紙面25–26頁の初期対応、紙面32頁の引継ぎ項目。
公開日:2026年11月1日/運営:AI実用ラボ
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